エド・シーラン「毎日かかさず5曲つくって、歴史に残る曲は2000曲目に生まれた。」

シンガーソングライターのエド・シーランは、過去10年の間で、英国から登場したミュージシャンの中で最も成功した人物だと言われています。

自身の妻に向けて書かれた「Perfect」はYouTubeやSpotifyで30億回以上再生され、ミレニアム世代の90%の結婚式で最初のダンスソングとして流れているという逸話がある。

また、地球で最も聴かれた曲の一つとして知られる「Shape of You」はクラブで恋が始まる瞬間のテーマ曲として知られ、海外ではShape of Youが流れると、その夜に10組のカップルが生まれるというジョークすら存在するのです。

世界中どこにいても、常にそこには彼の曲があるという意味で、エド・シーランは「音楽界のスタバ」とも言われますが、ほんの少し前までは路上でホームレスに近い生活をする一人のミュージシャンの過ぎませんでした。

エド・シーランはお金を稼ぐために路上で1年に300回以上のライブを行なっていました。

週末の結婚式で歌って小銭を稼ぎ、車や地下鉄で寝泊まりしながら、観客が一人も来ない場所で歌ったこともあったのだと言います。

そして、ライブと合わせて、彼は毎日5つの曲をつくり、とにかく徹底的な「量」をこなすことで、「量」を「質」に変えていったのです。

毎日作った曲のほとんどはとても歌と言えるものではありませんでしたが、今日の5曲は、先月の5曲と比べて、質が少しずつ良くなっていき、彼はこれを「水道理論」として次のように述べています。

「僕は1日に5曲とか書いてたけど、9割はひどい曲だったよ。」

「最初は汚れた水が出る。でも出し続ければ、やがてきれいな水が出るようになる。」

「僕の曲が急に良くなったわけじゃない。悪い曲を全部出し切ったからなんだよ。」

エド・シーランはYouTubeで40億回以上再生されている「Thinking Out Loud」を友達の家に遊びにいった時に15分で作り上げましたが、彼が「Thinking Out Loud」に辿り着くまでには2000曲以上の曲を作っているのです。

No.1ヒット曲「Shape of You」も、その日に書かれた5番目の曲だったのだと言います。

エド・シーランは時に経済的な不安からアルコールやドラックに手を出しながらも、どん底の状態を歌にすることで、感情を外に吐き出し、これを自身の中でセラピー的概念と捉えることで、何度も再生をしていきました。

作品の完成度が高いかどうか、それが流行に合っているかどうかという部分よりも、アーティストの一番の強みは観客の感情に訴える能力にあるのだと言える。

例えば、恋人や夫婦にとって「今夜が最高の夜だ！」と思える瞬間があったとします。でも、そのことを伝えたくて3分間「今夜が最高の夜だ！、今夜が最高の夜だ！」と言い続けたら相手はきっと怖がってしまうことだろう。

でも、それを3分間の曲として表現できたら、3分間の間、様々な角度から「今夜が最高の夜だ！」という想いを相手の感情に訴えかけることができます。

エド・シーランは自身の音楽キャリアについて、ヒット曲よりも進化させながら音楽を作り続けることだとし、エルトン・ジョンのキャリアを引用して次のように述べています。

「1位、1位、1位、12位、76位。その後10年間は何もしない。そしてまた1位、ライオン・キング、1位、1位。これこそがキャリアなのだろう。キャリアとはずっと上がり続けるものではないのです。」

彼の歌がまるで自分に「話しかけられている」ように感じる背景には、売れた時に何をしていたかということよりも、売れていなかった時に何をしていたかということが大きく影響していることは間違いありません。